「社長、どうして…?

こんな雷の中、どうして外を出歩いてるんですか…?」


こんなにずぶ濡れになって。


雷が怖いはずなのに…。


「由梨…」


名前を呼ばれ、トクンと心臓が音を立てた。


「俺、俺な…」


社長の澄んだ瞳が、私を真っ直ぐに見つめている。


いつになく真剣な目に、私は身動きがとれなくなった。


「やっと気づいたんだ」

 
打ちっぱなしのコンクリートの玄関ホールに、社長の声だけが響き渡る。


「な、何にですか…?」


どうしよう。


ドキドキが止まらない。


「俺…、


お前が好き」


え…?


今、なんて…?


社長が、私を…?


「リリーに似ているからとか、そんなんじゃないんだ。


本当にひとりの女性として、お前の事が好きなんだ」


「社長…」


それを言いに、雷の中来てくれたの…?


「俺が一番欲しいのは、由梨…。

お前だ。

それを言いに来た。

この気持ちを言わないで後悔するのは、もう二度とイヤだったんだ。

フラれてもいいから、伝えたかった…」


社長の声が震えている。


私も、指先が震えている。