朝日さんの動きがピタッと止まり、ゆっくり唇が離される。


「誰だろう?こんな時間に…」


朝日さんは起き上がり、リビングへと向かった。


私もゆっくり起き上がる。


気がつけば身体が少し震えていて、私は自分をそっと抱きしめた。


「え…、夏樹…?」


朝日さんの声にハッとする。


私は走って、モニターのある場所へと駆けつけた。


その小さな液晶画面に映っていたのは。


「社長…?」


どうしてここにいるの?


朝日さんは、私の目の前で呆然と立ち尽くしている。


こんな激しい雷の中、どうやってここまで…。


そう思ったら、私は走り出していた。


「由梨ちゃん?」


朝日さんが呼ぶ声も、耳に入っていなかった。


素足にスニーカーを履き、玄関を飛び出す。


無我夢中で階段を駆け下り、自動扉を開けるとそこには…。


雨でずぶ濡れになった社長が立っていた。


社長は息を切らして、肩で息をしている。


「社長…」


私が呼ぶと、社長が室内にゆっくり入って来た。


私を見つめる社長の目がきゅっと細くなる。


その顔を見ていたら、なぜか目に涙が滲んで来た。