「由梨ちゃん、しっかりあったまった?」


「はい」


お風呂から上がると、朝日さんは音楽ルームでパソコンのキーボードを叩いていた。


「お仕事ですか?」


「あー、うん。クライアントにメールの返信してた。もう大丈夫だよ」


私は窓際に置いてある小さな椅子に腰掛けた。


「あの、朝日さん」


「ん?」


「私、部屋を探そうと思うんです」


「えっ、どうして?」


朝日さんが驚いた顔で目を見開く。


「私の荷物がここへ来たら、すごく狭くなってしまうと思いますし、私、朝日さんのお仕事の邪魔をしたくないんです…」


それに、いつも朝日さんと一緒にいるって、なんか緊張して気が休まらないと思うし。


あ、多分こっちが本音だな。


「そんな、由梨ちゃん。僕は由梨ちゃんと一緒に居たいのに…」


朝日さんはなんだか悲しそうだ。


「大丈夫ですよ。これからいくらでも会えるじゃないですか」


私がそう言うと、朝日さんはキャスター付きの椅子ごと私の前に移動して私の両手を取った。


「由梨ちゃんの方が大人だね。僕はなんだか余裕がない。

僕の方が、好きの度合いが大きいのかもね…」


「朝日さん…」