食器を洗う音が静かな部屋に響く。


「由梨ちゃん、僕が洗うつもりだったのに」


お風呂上がりの濡れた髪にタオルを乗せた朝日さんが、キッチンに顔を出した。


「大丈夫です。もうすぐ終わりますから」


これからお世話になるんだもの。私が出来ることは、出来るだけ手伝いたい。


「由梨ちゃんって料理上手いんだね。さっき、ビックリしちゃった」


「えー。それは朝日さんですよ。野菜切るのも上手だし」


私は最後の一枚のお皿を洗い終え、タオルで濡れた手を拭った。


「今日はせっかくの大切な日なのに、あんなあり合わせのおかずで良かったの?」


「何言ってるんですか。充分過ぎるくらいですよ。ハンバーグ、すごくおいしかったです」


冷蔵庫の在庫を見て、料理を作れる男性がいるなんてビックリだ。


「朝日さんの冷蔵庫を見たら、なんだかホッとしました」


「え?どういう意味かな?」


「社長の家の冷蔵庫、何も入ってなかったんです。

入っていたのは、水とビールだけ。

最初見た時は本当に驚いたんです」


朝ご飯も食べないし、不健康って感じだった。


「相変わらずだね。あんまり自分を省みないというか」


やっぱり昔からなのか。


「由梨ちゃんもお風呂入っておいで。お湯入れてあるから」


「わ、嬉しいです。ありがとうございます」