あまりに突然の事で、一体何が起こっているのか理解出来ない。


指先が震えて、ぎゅっと握っていたシャツから自然に手が離れて膝へと落ちた。


硬直している私に反して、社長は首を傾け、頬に何度も唇を落とす。


その熱い唇は少しずつ移動し、私の唇の左端へと到着した。


ゆっくりと一度離れると、今度はぴったりと唇同士が重なった。


無意識に肩がビクンと上がる。


慌てて押し返そうとするけど、いつの間にか社長の右手が私の後頭部へと回っていた。


社長の唇がやわらかく触れては離れ、触れては離れを繰り返す。


そのあまりに優しいキスに、抵抗どころか受け入れてしまう自分がいた。


「由梨…」


わずかなキスの合間に、吐息混じりで私の名を呼ぶ社長。


こんな近い距離でささやかれると、いけないとわかっていても身体が蜜のようにとろけてしまう。


その時、私の脳がぐらりと揺れて。


背中にはソファの冷たい感触。


気がつけば私は社長と唇を重ねたまま、ソファに横たわっていた。