「夏樹さん。私、寂しいです…」


思わずギュッと社長のシャツにしがみついた。


「どうした?」


社長がびっくりしてるのが、その声色で伝わって来る。


「朝日さんのところにやっと行けるのに、夏樹さんと離れるのがつらいんです」


私、どうかしちゃったのかな?


自分でもこんな気持ちに戸惑ってしまう。


「お前、俺を心配し過ぎなんだよ。

だから、放っておけないだけ。

俺は大丈夫だから、余計な心配はしないで朝日のところへ行け。

それに、お前と俺はこれからだって毎日のようにお店で会えるだろう?」


それはそうだけど、でも…。


なぜか苦しい…。


「なんてな…」


え…?


「お前に言ってるようで、本当は自分に言い聞かせてる…」


社長の腕に少し力が入る。


「本当は俺も、すげぇ寂しい…」


「夏樹さん…」


社長も同じ気持ちなの…?


「水沢…」


「はい…」


「…由梨」


え…?


今、社長。


由梨って言った…?


確かに言ったよね?


社長の腕にさらに力が入る。


ドキドキしていたら、次の瞬間。


社長の顔が、ゆっくり私の顔に近づいて来て。




社長の唇が私の頬に落とされた。