「なぁ。お前、彼氏は?」


「えっ、私ですか?」


社長の突然の質問に、飲んでいるワインを吹き出しそうになった。


「今ここに、他に誰がいるんだよ」


それはごもっともですけれども。


「彼氏なんていませんよ。

20年間、彼氏なしです……」


「ふぅん…」


人に聞いておいて、その返事はなんなんだろう。


興味がないなら、聞かないで欲しい。


こっちはすごく恥ずかしいんだから。


「そういう社長はいないんですかー?」


とりあえず話の流れで聞いてみる。


「女なんて別に、必要なら手に入るし。

あえて特別なヤツ作る必要ないけどな」


うっ、なんてこと。


どうせ社長はモテるんでしょうねー。


妙にフェロモン振り撒いているわけだし。


「あきれたか?」


「い、いえ別に。

いいんじゃないんですか?

おモテになるんですから」


そう言えば、以前マネージャーが言っていた。


社長は女性に事欠かないのだとか。


全然優しくないのに、どこがいいんだろう。


世の中、所詮見た目重視って事か。


「誰と付き合ったって。

何人の女と付き合ったって、むなしいだけ」


ぽつり呟いて、視線を落とす社長。


「本当に欲しいのは、たった一人だけだ……」


掠れた声とともに、社長はひどく悲しい目をした。