「確かにお前がいなくなると、リリーがいなくなるみたいな気分だ。

正直、寂しくなるよ…」


社長の言葉に、私は顔を上げた。


社長は私の頭から手をゆっくり下ろすと、ソファにもたれかかった。


「まぁ、もう慣れっこだけどな」


カクテルを口にする社長の顔に、夜景の灯かりがほんのり照らされている。


今夜の社長は、いつになく綺麗に見えるのはどうしてなのだろう。


「なぁ、水沢」


「はい」


「頼みがある」


「…なんでしょう?」


私がそう言うと、社長はカクテルの入った缶をソファのヘリに置いた。


そして私に身体を向けると、目を閉じて、静かに深呼吸をした。


「もう今夜が最後だから…」


開かれた瞼の下から現れた瞳がゆらゆらとして綺麗で、私は捕らわれたみたいに身動きが取れなくなった。


最後だから…。


最後だから、何……?


私はゴクリ息を呑んで、社長の言葉を待った。



「水沢。



最後に…。



最後にお前の事、






抱きしめていい……?」