ユリ?


リリーちゃんの名前の意味は、ユリだったの?


「ユリの花は、死んだ母親が一番好きな花だったんだ。

だから、おやじがリリーっていう名前にしたんだよ」


「そう、だったんですね…」


社長は、私の名前を一番に覚えてくれてたんだ。


「ごめん、な…」


社長がぽつり、呟くように言った。


私は首を横に振った。


「俺、昔っからあまのじゃくなんだ。

朝日が馴れ馴れしく“由梨ちゃん”なんて呼ぶから、ちょっとだけムッとしたんだ。

だから、知らないフリをした」


あまのじゃくって言うか、子供っぽいって言うか。


社長って損な性格かもしれない……。


「お前、良かったな。

やっと朝日のところへ行けるな」


社長が優しい瞳で笑う。


「今までよく我慢したな。

でもここまで我慢したからこそ、堂々とアイツのところへ行けるんだ。

愛人じゃなく、正式な彼女としてな…」


社長の言葉に、胸がキュンとしてしまう。


「あの、社長。

本当にありがとうございました。

社長が二人が別れるまで会うなって言ってくれたから、こうして朝日さんのところへ行けます…。

社長のお陰です…」


私は頭を下げた。


次の瞬間、社長の手が私の頭にそっと置かれた。