水沢が俺のために歌を歌ってくれた。


その気持ちが嬉しかった。


「お前、発音がところどころ間違ってたぞ」


だけど俺は、こんな憎まれ口を叩いてしまう。


「わー、ごめんなさい。さすが外大を出ている人は違いますね。

かえって気が散って眠れないですよね」


そんなことはない。


俺はひそかに感動したんだ。


優しくて、あたたかいコイツの歌声に。


多分目が潤んでいるから、今は瞼を上げられないんだ。


こんな時、素直にありがとうと言えたらどんなにかいいのに、照れくさくてどうしても言えない。


あと何日、コイツは俺の家にいるのだろう?


居なくなっても、毎日職場で会えるけど。


でも、こんなふうに眠れぬ夜を一緒に過ごしたり、同じ部屋で食事をしたりする機会は、もう二度と訪れないのだろう。


この数ヶ月の間に、コイツの雰囲気は随分変わった。


少年っぽい顔立ちだと思っていたけれど、瞳が澄んでいて肌も綺麗だ。


一緒に暮らすまで気づかなかったけど、スタイルが抜群に良いし、髪が伸びてから急に色っぽくなった。


おそらく朝日に愛されている事が、コイツをこんなふうに変えたのだろう。


正直、眩し過ぎて困るくらいだ。


それより何より、この子は本当に真っ直ぐでいい子だから…。


朝日が惚れるのも、わかる気がする。


朝日は、女を見る目があるんだな…。