布団の中で私の足と社長の足がぶつかって、私はビックリして膝を曲げた。


だけど社長はそんなことは気にも留めず、両腕を頭の後ろに組んで仰向けに寝転んでいる。


「なんか、眠れそうにないよな」


「…ですね」


もうすぐ2時になるっていうのに…。


「俺さ、一人っ子だったし、小学生になってもずっと母親の隣で寝てたんだ」


社長って一人っ子なんだ。


あー、でもそんな感じはするかも。


「母さんが死んだ後、夜が怖くて怖くて。

帰りが遅いおやじとは部屋が違ってたし、お手伝いさんも夜は帰るしな。

しばらく眠れない日々を過ごしてたんだ」


小学校2年生って言ったら、まだまだ幼いのに。


きっと、すごく寂しかっただろうな。


「リリーが来てからは、毎晩リリーと一緒に寝てた。

たとえペットでも、誰かが同じ部屋に居てくれるってすげー安心するよな」


確かにそうだよね。


私も今でこそ慣れたけど、ひとり暮らしを始めてしばらくはなかなか寝付けなかったもの。


「お前がそこに居るから眠れそうな気がするのに、今日はどうしてか眠れそうにない」


ふぅとため息をつく社長。


「何か悩みでもあるんですか?」


ふと発した私の質問に黙ってしまう社長。


仕事、大変なのかな…?


「あると言えば、あるな……」


社長はそうつぶやいて目を閉じた。