「ここからが南イタリアだ」


「わ…あ、海が綺麗。真っ青ですね。すごい景色だ…」


家も可愛いし、全てが一枚の絵のようだ。


「行ってみたいなあ」


行って、この景色を間近で見てみたい。


きっと感動するんだろうな。


だって、こんなに綺麗なんだもの。


「連れて行ってやろうか?」


「え?」


「俺イタリア語が話せるし、ガイドしてやるよ」


無意識に指に力が入って、私はそっと拳を握った。


社長の言った言葉の意味を考える。


それは、本気の言葉?


それとも…。


「……いつか、社員旅行で企画してみるか」


「…そ、うですね。いいですね。

みんなで行きたいですね」


にっこり笑って見せる。


いけない。


また心臓が…。


どうして。


どうして社長の話す言葉ひとつひとつに、こんなにドキドキしてしまうんだろう。


社長は何百枚もある写真を、時折説明をしながら流すように見せてくれた。


私はそれを、とても楽しく見ていた。


写真の中の社長のくったくのない笑顔を見てると、なんだか心がほっこりするのを感じた。


そうして一通り写真を見終わると、社長はパタンとパソコンを閉じた。


社長が立ち上がって、ノートパソコンをデスクの上に置きに行く。


私はその後ろ姿を、ただじっと見つめていた。


そろそろ、自分の部屋に戻らなくちゃ…。


すっかり冷たくなった残りのハーブティーをそっと口にする。


なんとなく寂しくて俯いていたら、社長が布団の中にスッと入って来た。