そう…だね。


保護者というか、リリーちゃんと同じ扱いっていうか。


社長は大切なことを沢山教えてくれる存在だなと思う。


「夏樹と一緒に住んでるなら、ますます急がなくちゃ。

夏樹とあんまり仲良くされると、正直妬けてくるし…」


朝日さんが嫉妬してくれてるんだと思うと、なんだかくすぐったい気持ちになる。


こんなふうに誰かに思われる日が来るなんて、思いもしなかった。


朝日さんに愛される自分が、いとおしく思える。


「由梨ちゃん」


名前を呼ばれてふと顔を上げると、視界が急に暗くなった。


突然の事に固まっていると、私の唇が柔らかくて優しい感触に包まれた。


それがキスだということを理解する前に、朝日さんはニッと口角を上げてゆっくり離れていった。


あまりの早さに、私は目を閉じるのも忘れてしまっていた。


「さすがに昼間だからね」


朝日さんが色っぽく笑うから、顔が一気に赤くなる。


耳の方まで熱くてドキドキしていたら、朝日さんがそっと私の手を握った。


親指で軽く私の手の甲を撫でた後、そっと指を絡ませる朝日さん。


「待っててね。由梨ちゃんを必ず迎えに行くから。

その時は、僕と一緒に暮らそう」


朝日さんの澄んだ優しい声に、涙が出そうになる。


私はその言葉を噛みしめながら、何度も何度も頷いた。


日に日に深さを増していく秋。


ありささんと朝日さんが別れる日が近づいていた。


それは、私と社長との同居生活が終わりを告げることを意味していた。