「ありさがなかなか引かないのは、僕が優柔不断だからだ。

僕の態度が、彼女に期待を持たせてしまうんだと思う。

でももう、そんなのはやめにする。

海外へ行く事を僕のせいで迷っているなら、僕がハッキリさせる事が一番ありさのためになるよね…?

ありさはずっと海外で仕事することに憧れていたし…」


朝日さんの顔の力がふっと抜ける。


「好きな人がいるって、ハッキリ言うよ…」


「朝日さん…」


「そんなのズルイ気がして、今まで言えなかったんだ。

だけど、もう言わなくちゃ。

僕は、由梨ちゃんが好きだから…」


朝日さんは本当に優しい人なんだ。


だけど、その優しさは時に人を傷つけてしまうのかもしれない。


私がありささんの立場なら、きっとハッキリ言って欲しいだろうと思う。


もう可能性が全くないのであれば…。


「それにしても、ちょっとショックだった。

ううん、かなりショックだった。

由梨ちゃんが夏樹の家に住んでるなんて」


うっ、そうだよね。


「ホントにごめんなさい。

隠しててごめんなさい」


私は必死に頭を下げた。


「心配だよ。ホントに何もされてないの?」


「ホントに何もされてないです。

社長はお忙しくて、ほとんどすれ違いの生活ですし。

それに社長って思っていたよりずっといい人で、良くしてくださってます」


私がそう言うと、朝日さんは複雑そうにため息をついた。


「アイツにとって由梨ちゃんは、ホントに大切な部下って事なのか…」


朝日さんは、ぽつり呟いた。