朝日さんの車は社長の車とは違ってコンパクトだけど、内装がとてもお洒落で可愛い。


少し開いた窓から吹き込んで来る風が心地良くて、私は少しの間目を閉じた。


朝日さんの車は、朝日さんのようなさわやかな香りがする。


「由梨ちゃん」


突然呼ばれて、私はハッと目を開けた。


「ごめんね…」


「え…?」


ごめんって何?


朝日さんの表情を探ろうとするけど、長い前髪に隠れてよく見えない。


「夏樹の言うとおりだ…」


朝日さんはいつの間にか川沿いを走っていて、停められそうなスペースに車を停めた。


車を完全に停車させエンジンを切ると、私のいる方向に身体を向けた。


「僕は、20歳から25歳までのありさの5年間を一番近くで見てきたよ。

彼女が一番綺麗な時期だったと思う。

それを急に僕の都合で断ち切る事が、すごく申し訳なくて彼女が不憫だったんだ。

僕の方から好きになって告白したし、その責任を感じてたんだ。

だけどそんなの、ただの偽善だったんだ。

罪悪感で苦しむのがイヤだから、決定的なことを言うのを避けてたんだ。

ありさのこと思いやってるようで、自分のことしか考えてなかったんだ。

最低だね、僕は…」


そう言って、朝日さんは悲しそうに視線を落とした。