「夏樹、どうしてこんなところに?」


朝日さんに声をかけられ、一瞬にして社長の顔が強張った。


社長ってば、朝日さんの姿が全然目に入ってなかったんだーっ。


朝日さんが、私と社長の姿を交互に見つめている。


社長の手にはレンタルショップの袋、私の手には大量の食材が入った買い物袋。


この格好でこの場所に一緒にいるのは、どう見たってどう考えたって絶対怪しいはず…。


私は背中に変な汗が流れるのを感じた。


「もしかして由梨ちゃんが一緒に暮らしてるのって、夏樹なの……?」


ぎゃーーー!バレたっ。


どうしよう、どうしよう。


どうしたらいいのーーー?


困って立ち尽くしていると。


「あぁ、そうだよ」


社長があっさり言い放った。


「……っ。どうしてなの?由梨ちゃん」


顔をしかめて、せつなそうに私を問い詰める朝日さん。


「あの…、朝日さん」


どうしよう。なんて言えばいいの?


頭がパニックになっていたら、社長がスッと私の前に出た。


「俺が引越しさせたんだ」


「え…?」


朝日さんが大きく目を見開く。


「ウチの大事な従業員に、手を出されたら困るからな」


社長ってば、何を言ってるの?


「どういう意味だよ」


朝日さんがめずらしく怖い顔になった。


「言ったそのままだけど?

だってお前、彼女いるじゃん。

それなのに水沢に近づこうっての?

そういうのをな、二股って言うんだよっ」


「社長、やめてください」


どうして?社長。


朝日さんに、そんな言い方しないで。


「だからって、どうしてお前の家なんだよ。社長として、そういうこと許されるのか?」


いつもの優しくて穏やかな朝日さんじゃない。


本気で怒ってるんだ……。