穏やかで紳士的だった社長の口調が、急にドスの利いた低い声に変わったので、深田君の肩がビクンと上がった。


すっかり怯んでしまって、動揺しているようだ。


「それでは失礼します」


そう言って社長は私の肩を抱き、助手席のドアまで実にスマートにエスコートした。


私は申し訳なくて、チラリと深田君の方を見た。


「水沢、お前良かったじゃん。カッコイイ彼氏が出来て……」


深田君はボソッと呟くように言った。


私はコクンと頷いて、車に乗り込んだ。


社長もすぐに運転席に乗り込み、車を発進させた。


静まる車内。


私は、なんだかドキドキしていた。


社長は何を思って、あんなことを深田君に言ったんだろう…?


「水沢」


社長が低い声で私の名前を呼ぶ。


「お前、男と気軽に連絡先の交換なんかするんじゃない」


「えぇ?」


ど、どうして?


同じ高校の同級生と連絡先交換して、何が悪いんだろう。


「アイツが考えていた事、教えてやろうか?」


「え…?」


な、なに……?


「お前とセックスする気満々だったんだよ」


「……っ。そんなまさか…!」


私がそう言うと、社長はチッと舌打ちをした。


「アイツ、お前に告白されただろ?

だから、お前に対して上から目線なんだ。

ちょっと優しくしてやりゃー、お前が応じるくらいに思ってんだよっ」


「深田君に限ってそんな…」


「男なんてそんなもんだ。

お前、アイツに連絡先聞かれる前に、どこか行こうとか誘われなかったか?」


「え…?あ、誘われました。お茶しないかって」


「ーだと思った。

もうこれからは、気軽に男と連絡先なんか交換するな。

相手はお前のこと、女と思ってんだから…」


女…?


私が……?