「水沢、なんか雰囲気変わったね」


「え?」


「髪が伸びたせいかな?」


そうなのかな?


朝日さんのウィッグを被って以来、私は髪を伸ばしている。


だいぶ伸びてきて、今ではボブくらいの長さになった。


「水沢、今時間ある?良かったらお茶でもしない?」


突然深田君に言われて、ドキンと心臓が跳ねる。


「あの、ごめんなさい。連れがいるの」


「そうなんだ…。残念だな。

あ、じゃあ連絡先交換しようよ」


「え…?」


なんで連絡先なんか聞きたがるのかな?


でもまぁ、教えてもいいか。


高校の同級生なんだし。


そう思って、スマートフォンをカバンから取り出した時だった。


私と深田君の横に停まる一台の高級外車。


スーッと窓が開き、サングラスをかけた社長が顔を出す。


「何してる?」


社長が低い声で言った。


「あの、この前話した同じ高校の野球部の深田君です。

こっちで試合があったらしくて、偶然会ったんです」


私がそう答えると、社長はガチャンとドアを開けて、私の横にスッと立った。


「これは何だ?」


そう言って、私のスマートフォンをつまみ上げる社長。


「あの、連絡先を交換しようかと…」


私の言葉に、社長が「へぇ…」と深田君の方を見た。


「ね、ねぇ、水沢。この人誰?」


深田君が顔をしかめて、私に尋ねる。


すると、社長がスッとサングラスを取り外した。