「とりあえず、駅前からは離れるか。意外に不便だしな。

ここのロータリーで待ってて。俺、駐車場から車出してくる」


「あ、はい…」


そう言って社長は、地下駐車場へと向かった。


走って行く社長の後姿をこうして見てみると、やっぱりすごくカッコイイ。


社長は朝日さんより背が低いけど、それでもかなり高い方だと思う。


いつ鍛えてるのかわからないけど、結構引き締まっているし、それに何よりすごくセクシーだ。


あんな人と一緒に暮らしているなんて、今さらながらにすごい事だと思ってしまう。


そんな事をブツブツ考えていた時だった。


「水沢?」


急に名前を呼ばれて、ドキッと心臓が跳ねた。


誰だろうと振り返ると。


「え…?」


「久しぶりだね」


「深田君…」


うそ…。


信じられない。


私の目の前にいるのは。


私が高校三年間ずっと好きだった、野球部の深田君だった。


「どうしたの?こんなところで」


どうして深田君が、この街にいるんだろう。


「大学の野球の試合でこっちに来てたんだ。

もう試合は終わったんだけど、ちょっと観光でもして帰ろうかと思ってウロウロしてたんだ。

水沢はどうしたの?」


「あ、私はこの街に住んでるから」


「そうなんだ。ホント、久しぶりだよな」


2年半ぶり…だよね。


あの頃とあまり変わってないけれど、私服姿の深田君を見るのは初めてだ。


あぁ、どうしよう。


振られた者としては、告白した人に会うのって、とても気まずいんだけど…。