ふと厨房に目を向けると、せつない顔をした社長の姿が見えた。


視線の先は…、あの二人だ。


どうしたんだろう?


なんだか社長、悲しい瞳をしている。


しばらく見ていたら、社長とバッチリ目が合ってしまった。


社長の顔がみるみる険しくなっていく。


「おい、水沢。早くこれ持って行け」


「あ、はい。ただいま」


私は前菜を持って、二人のテーブルへと運んだ。


「バーニャカウダでございます」


「わぁ、おいしそう」


ありささんが無邪気な顔で笑う。


ん?


ありささんって、どこかで見たことがある。


どこで見たのかな?


有名人に似ているとか?


いや、違うな。


どうして私、この顔を知っているんだろう。


あっ、わかった!


あの写真。


社長が持っていた写真の女性。


間違いない。


あれは、ありささんだ。


どうして社長がありささんの写真を…?