「へぇ。結婚、ね」


社長は呟くように言った。


「もう付き合って長いしね。

そろそろいいかなって思って」


朝日さんの言葉に、社長が数回小さく頷く。


「結婚披露パーティー、ここのレストランで出来たら嬉しいんだけど。

そういう使い方ってできる?」


「あぁ、もちろん対応してるよ」


「じゃあ、お願いしようよ。楽しみだわー」


嬉しそうに笑う朝日さんとありささん。


本当にお似合いだなと、心からそう思った。


しばらくその場に立っていた私だったけど、他にもお客様がいるので静かに仕事に戻った。


店内を動き回りながらも、私は朝日さんとありささんが気になって仕方がなかった。


朝日さんが優しく微笑むと、ありささんもにっこり見つめ返す。


そのたびに、胸がきゅっと痛くなる。


どうしてだろう。


生まれて初めて男の人に優しくされたから?


もしかして何かに発展するかもなんて、そんなこと思っていたの?


バッカじゃない? 由梨。


あんな綺麗な彼女がいるのに。


そうだよ。


男の人はいつだって、綺麗な女性を選ぶの。


私なんか、誰も相手にしないんだから。