「あぁ…だからなのかもしれない」


「え…?」


「俺は、母さんの面影をありさに重ねてたんだ。

だから朝日と付き合い始めても、ずっと忘れられなかったんだ…」


社長の腕に力が入る。


「俺がありさにこだわっていたのは、そこだったんだ…。

好きで好きで、どうしようもないくらいアイツが欲しいと思ってたけど。

俺が本当に欲しかったのは、母親のぬくもりだったのかもしれない…」


「夏樹さん…」


社長がふぅとため息をつく。


その息が耳にかかって、ちょっとゾクゾクしてしまう。


「夏樹さん…。仮にありささんにお母様を重ねていたんだとしても、それでもありささんがずっと好きだったんでしょう?

これから、付き合いたいとは思わないんですか…?」


朝日さんを好きな私がこんなことを言うのは、間違ってるかもしれないけど…。


「そりゃ付き合ってみたいけど…。

でもアイツ、俺のこと友達としか思ってないと思うし…」


社長の声が少し沈む。


「それは夏樹さんがきちんと思いを伝えてないからですよ」


「え…?」


「伝えたら、意識してくれるかもしれないじゃないですか。

もしかしたらこれから、そういう対象になるかもしれないじゃないですか。

告白…してみたらどうですか…?」


「水沢…」