「な、夏樹さん。今まで雷の日はどうされてたんです?」


こんなに怖がってるのに、一人暮らしで平気だったんだろうか。


「あー…、女呼んでた」


うっ、そうなんだ。


なんか想像したら、イヤだな…。


「でも、誰も来なかったよ」


「えっ?」


「雷雨の夜に会いに来るような、そんな根性のある女はいないよ」


うーん、確かに。


私は平気だけど、普通の女の子だったら雷は怖いよね。


「だから、イヤホンして音楽ガンガンにかけて、枕かぶって寝てた。
まぁ当然、それじゃあ眠れないけどな…」


そうだったんだ…。


社長っていつもお店ではクールだし、そんな大変な思いをしていたなんて知らなかった。


雷が鳴るたび、社長の腕に力が入る。


私は社長の手にそっと自分の手を置いた。


「大丈夫ですよ…」


「ん…」


社長はゆっくり呼吸を整えているようだ。


ふと視線を部屋に移すと、社長のパソコンデスクに女の人の写真が飾ってあるのが見えた。


「夏樹さん、あの人誰ですか?」


「ん…?なに?」


「デスクにある写真です」


「あぁ、あれか」


ここからじゃあんまりハッキリは見えないけど、細くて色白で髪が長くて。


すごく綺麗な人のような気がする。


「俺の母親だよ…」