気がつけば私は、社長の腕の中にいた。


それに気づいたと同時に、外でものすごい雷の音が響き渡った。


社長の手は小刻みに震えていて、少し呼吸が乱れている。


「だ、大丈夫ですよ、社長。私がいます。だから…」


そんなに怖がらないで……。


社長は私よりずっと大きいのに、なんだか子供みたいに小さく見える。


私は社長の背中に腕を回して、そっと撫でてあげた。


社長が抱きしめる腕に力を込める。


社長の心臓の鼓動、ものすごく速い。


本当に雷が怖いんだ…。


「水沢…。このままでもいい?」


「え…?」


「このままこうしててもいいか?」


「で、でも…」


添い寝の約束だったのに、これじゃまるで…。


「お前、さっきから俺の事“社長”って呼んでるだろう?」


「あ…」


そうだった。すっかり忘れてた。


家では夏樹さんって呼ばないといけないんだった。


「だから、ペナルティな」


うっ…、まじで?


「でも、社…じゃない、夏樹さん。

これじゃ息が苦しいです」


こんなに強く抱きしめられてたら、窒息しそうだよ。


「ん…。じゃあ、あっち向いていいよ」


あっち?


私は寝返りを打って、社長に背を向けた。


するとその直後、後ろから抱きしめられ、私のおなかに社長の両手が重なった。


「これならいい?」


私の耳元に、社長の低い声が響く。


こ、これはこれで、ドキドキしてしまうんですけど…。