「どうして雷が怖いんですか?」


仰向けのまま、社長に尋ねてみた。


社長も私と同じように天井を向いている。


あれ?


何も言わない。


言いたくないのかな?


まぁいいか…。


そう思っていたら、社長がゆっくり話し始めた。


「子供の頃からなんだ。

小学校2年の時から。

それまでは平気だったんだけど…」


社長がふぅとため息をつく。


「どうして急に怖くなったんです?」


私はチラリ社長を見てみた。


社長は遠くを見るような目をしている。


あ、まただ。


この瞳。


ひどく悲しそうな瞳…。


「実は俺、母親を亡くしてるんだ」


「え…?」


「俺の母親、体が弱くてさ。病気だったんだ」


「そう…だったんですか」


知らなかった。


てっきりご健在かと思っていたから…。


「その母親が亡くなった日。

その日が大雨だったんだ。

ひどい雷雨でさ…。

病室で見た亡くなった母親の顔と、雷の音がリンクして。

だから、イヤでも思い出してしまうんだ。

雷が鳴るたびに、死んだ母親のことを…」


「社長…」


その時だった。


カーテンの隙間から、ピカッと稲光が走った。


「……っ」