「由梨ちゃん、オススメは何かな?」


「そうですね。今日はこちらのコースがオススメです。メインは魚とお肉から選んでいただけますよ」


「私、魚がいいわ。朝日君は?」


「僕はお肉にしようかな」


「はい、かしこまりました。ワインはどうなさいますか?」


「このワインの白をもらえる?ハーフボトルで」


「はい」


私はオーダーを伝えに厨房へ向かった。


大学の同級生か…。


偶然知り合った人と、自分の上司がまさか知り合いだなんて思いもしなかった。


世間って案外狭いんだな。


私はワインを持って、朝日さんのいるテーブルへと向かった。


「失礼します」


ワインオープナーでコルクを開け、お客様にラベルが見えるようにボトルの下を右手で持つ。


左手にナフキンを持ち、ゆっくりグラスにワインを注ぐと、グラスがキラリと薄い黄色に染まった。


何度も練習した一連の動作なのに、社長と朝日さんとありささんに見られたら、ガラにもなく緊張してしまった。