「あー、またガターだ」


ありさが頭をコツンと押さえて、照れくさそうに笑う。


その仕草は、天使のように可愛らしい。


「でもさっきより良くなってるぞ。あともう少しだ」


「ホント?じゃあ頑張るね」


学生の頃もこうやって、俺達はサークル仲間と一緒にボウリングをしに来たっけ。


ありさは昔からボウリングが苦手だった。


ひどいスコアだったけど、かえってそれが俺ら男連中の心をくすぐった。


見た目にもよるけど、ありさみたいな女の子は出来ないくらいの方が可愛い。


それなのに水沢のヤツ、187って…。


おれと10ピン差ってどういう事だよ。


ボウリングには自信があったのに、ことごとくプライドを傷つけられたような気がする…。


それにしても、アイツらなかなか戻って来ねぇな。


久しぶりに二人っきりになって、すっかり盛り上がってんのかねー。


あー、やだやだ。


「夏樹君、7ピン倒れたよー」


スカートをひるがえして、ありさがにっこり微笑む。


「おぉー、上達したじゃん。すげぇな」


「夏樹君の指導がうまいからかな?」


「嬉しいこと言ってくれるねぇ」


ありさは俺の横にちょこんと座って、お茶を口にした。


いつ見ても、ありさはとても綺麗な子だ。


あの頃と何ひとつ変わっていない。


変わってしまったものがあるとすればそれは…。


「ねぇ、夏樹君」


「ん?」


「私と朝日君ね、もうダメかも…」


え…?