「みんなすごく上手だね。私は下手だから、なんだか悲しくなっちゃう」


ありさがふぅとため息をつく。


下手なのをわかっていて、どうしてありさは自分からボウリングをしたいなんて言ったんだろう。


「ありさは最初から軸がズレてるんだよ。あのな、こうするんだ」


夏樹がありさに、ボウリング指導を始めた。


それを、ありさが真剣に聞いている。


しばらくその様子を見ていた僕だけど、痺れを切らして声をかけた。


「ねぇ、まだゲーム続ける?」


そうみんなに問いかけると、由梨ちゃんが「私はもういいです。皆さんでどうぞ」と言った。


僕もすかさず「僕ももういいや」と言った。


夏樹とありさはう~んと迷った顔をしている。


「夏樹、ありさにボウリング教えてやって。二人でもう1ゲームやるといいよ」


僕がそう言うと、夏樹とありさは「じゃあそうしようか」と言って、再びゲームを始めた。


その二人の姿を確認した後、その場に立ち尽くしている由梨ちゃんの近くに僕はさりげなく近づいた。


「由梨ちゃん、あっちのゲームコーナーにでも行かない?」


小声でそっと話しかけた。


由梨ちゃんはビックリしていたけど、コクンと頷いて僕の後ろに付いて来た。


僕はやっと彼女と二人きりになれる事が嬉しくて、自然に顔が緩んでしまっていた。