「お前、何フックボールなんか投げてるんだよっ」


夏樹が本気で驚いている。


無理もない。僕も驚いてるし。


だけど当の由梨ちゃんは、何事もなかったかのように静かに腰を下ろしてペットボトルの水を飲んでいた。


次に僕が投げたけど、9ピンしか倒れなかった。


ありさにいたっては、もう言うのも恥ずかしい結果だった。


その後、夏樹と由梨ちゃんは二人でストライクを出しまくっていて、二人の一騎打ちになっていた。


そして迎えた6ゲーム目。


夏樹はストライクを出したけど、由梨ちゃんは初めてストライクを外して8ピンだった。


しかも、残りの2つはスピリットだ。


これはスペアを取るには一番難しい形で、プロでも取るのは難しいとされている。


勝利を確信したのか、夏樹は目がイキイキし始めた。


わかりやすいヤツ…。


由梨ちゃんは冷静な顔でレーンの前に立った。


綺麗に脚を運び、ボールが放たれる。


由梨ちゃんは今日初めてストレートを投げた。


そのボールは真っ直ぐ片方のピンに当たり、その跳ね返りで反対側のピンが見事に倒れた。


それを見ていた夏樹の顔がみるみる歪んでいく。


「おまっ、なんであんなの取れるんだよ」


由梨ちゃんが座るや否や、詰め寄る夏樹。


「ラッキーでした。毎回取れるわけじゃないので」


あくまで冷静な由梨ちゃん。


「屈辱だ…。ここまでうまい女には初めて会った」


夏樹にこんな顔をさせる由梨ちゃんってすごいなと、僕はクスリと笑ってしまった。


「ねぇ、朝日君」


由梨ちゃんばかりを見ていた僕を知ってか知らずか、ありさが話しかけてきた。


「あの二人って、なんだかお似合いだと思わない?」


「え…?」