その日のディナータイム。


ピークが少し落ち着いて来た時だった。


お店の入口のドアが開いて、一人の男性客が入って来られた。


「いらっしゃいませ」


元気に挨拶をするとそこには。


「由梨ちゃん」


うそ…。


ホントに…?


一瞬目を疑った。
 

私の目の前に立っていたのは、紺色の細身のスーツを爽やかに着こなした朝日さんだった。


「約束通り来たよ」


この前と同様、優しく微笑む朝日さん。


ジャージ姿だって充分素敵だったのに、スーツを着た朝日さんはこの上なく洗練されている。


どうしよう。


嬉しい。


本当に来てくれたんだ。


まさかもう一度会えるなんて!


思わず笑みがこぼれたその時だった。


「あなたが由梨ちゃん?」


朝日さんの後ろから、ちょこんと顔を出す小柄な女性。


「朝日君を助けてくれてありがとう。命の恩人だわ」


白いワンピースを着たその女性は、髪が長くて可憐で。


一体、誰……?


「由梨ちゃん、彼女は伊藤ありさ。僕の彼女だよ」


「え…」


彼女?


そうか。


そうだよね。


こんなに素敵な人なんだもの。


彼女がいて当然だよね。


私に会いに来てくれたと思って、少しでも浮かれていた自分が恥ずかしい。


「ねぇ、由梨ちゃん。夏樹いる?」


「は?」


「久遠夏樹。ここの社長でしょう?」


「社長はいますけど、どうかなさいましたか?」


「実は俺とありさと夏樹はね、大学の同級生なんだ」


「ど、同級生っ?」


な、なななんですとーーーっ?