「すみません。そろそろ私、休ませていただきます…」


これ以上ここにいたら、身がもたない。


社長にからかわれるたびに、ドッと疲れるんだもの。


「ん、わかった。おやすみ」


な、なんかやけにあっさりだよね。

 
社長ってよくわかんない。


「おやすみなさい」


社長に頭を下げると、私はリビングを出て部屋へと向かった。


「はぁ…」


部屋に入るなり、自分のベッドにゴロンと横になった。


やっぱり自分の布団って落ち着くな。


夏用の掛け布団に絡みつく。


本当に社長の家に引っ越してしまった。


社長のマンションは何もかもすごくて、庶民の私はビックリしっぱなしだった。


でも、何よりも驚いているのは。


社長だ…。


社長って、お店で見る時と全然違う。


家じゃ怖くないって言ってたけど、ホントにそうだった。


朝日さんの名前を出した時以外は、ずっと優しい顔をしていた。


なんだか、お店とのギャップに戸惑ってしまう。


明日お店に行ったら、やっぱり社長は社長なんだろうか。


きっと、そうなんだろうな。


そうやって社長は、家と外で人格使い分けてるのかもしれない。


それにしても、朝日さん…。


今頃どうしてるのかな。


ありささんとはどうなったのかな?


私、社長の家に引っ越してしまいました。


そんなこと知ったら、朝日さんはどう思うだろう…。


一体私、これからどうなってしまうの…?