時々社長ってこういう瞳をする。


前にも見たような気がする。


あ…思い出した。


朝日さんとありささんが、初めてお店に来た日だ。


あの時社長は、今のような瞳をしてありささんの事を見つめてた。


どうして…なのかな?


「ワンちゃんの名前は何て言うんです?」


少し戸惑いつつ聞いてみれば。


「リリー」


社長は静かに答えた。


「リリーちゃんですか。ーということは女の子なのかな?」


「そ、メス。

俺、基本犬も猫も苦手なんだけどさ、コイツだけはなんでか知らないけど平気だった。

ちょこちょこ俺にまとわりついて。

うっとうしいんだけど、なんか憎めなくて。

可愛かったよ、まじで」


そう言って社長が、懐かしそうに目を細める。


社長でもこんな顔をするんだなあと、ちょっとビックリしてしまった。


しばらくして、社長も私も食べ終えたので、私は後片付けをするため立ち上がった。


「なぁ、水沢」


「はい?」


「また作ってくれない?」


「え?」


「お前の手料理、また食いたい」


びっくりして目がぱちぱちしてしまう。


「も、もちろんですよ。お世話になるんですし、それくらいのこと…」


私がそう言うと、社長はにっこりと笑った。


その笑顔に妙にドキドキしながら、私はキッチンへと食べ終わったお皿を運んだ。