最上階に到着し、やわらかなカーペットの床の上を歩き、社長の部屋のドアの前に立つ。


私は一度深呼吸をし、カギを開けて中へと入った。


「か、帰りましたー」


ぎこちなく言葉を発して買い物袋を抱えてリビングに入ると、社長はソファの上で何か雑誌を読んでいた。


「おかえり」


社長の優しい笑顔に、頬が熱くなるのを感じた。


「あ、あの。すぐ準備しますから」


キッチンに行って買い込んで来たものを袋から出す。


ワシャワシャと音を立てていたら、いつの間にかカウンター越しに社長が立っていた。


「結構買い込んだんだな。ソバだけかと思ってたのに」


そう言ってカウンターに両肘を置く社長。


「明日からの事も考えて、調味料とかも買ったんです」


「ふぅん…」


どうしてなのかわからないけれど、社長はずっと私の事を眺めている。


そんなに見つめられると緊張するんですけど。


「あの、社長。あちらでゆっくり待ってていただけませんか?すぐに準備しますから」


「いいじゃん。作るとこ見せてよ」


「なっ、イヤですよっ。

作りづらいじゃないですか。しゃ、社長はこの枝豆でも食べててください」


そう言って私は、買ってきた枝豆を社長に手渡した。


「おっ、うまそうじゃん。枝豆なんて久しぶりだなあ」


ふっ、絶対そう言うと思った。


「じゃあ、ビールでも飲んで待ってようかな~」


そう言って社長は冷蔵庫からビールを取り出して、ご機嫌な顔でリビングへと向かった。


あー良かった。


じっと見られてたんじゃ、恥ずかしくて落ち着かないもの。