「そう言えば社長。私の洗濯機が見当たらないんですけど、ご存知ないですか?」


部屋に冷蔵庫は置いてあったけど、洗濯機はなかった。


どこ行っちゃったんだろう。


「あぁ、あれな。脱衣場に運んでもらった」


「えっ?大丈夫なんですか?社長の洗濯機は?」


「俺の家、洗濯機ねぇから」


「は?じゃあ社長、普段洗濯はどうされてるんですか?」


困るでしょ?洗濯機がないと。


「あー俺、洗濯代行頼んでるから」


「はっ?」


何?その、洗濯ダイコウって。


「さっきコンシェルジュの秋山さんに会ったろ?」


「え?あ、はい…」


なに?コンシェ…?


「あの人に渡すんだよ。

えっと、このランドリーバッグに洗濯物を入れて。

そしたら、二日後には綺麗な状態で戻ってくる」


紺色の大きなランドリーバッグを見て、思わず目を見開いた。


このマンション、そんなサービスもあるの?


「スーツやYシャツはクリーニングに出すしな。それにこのマンション、洗濯物を外に干せないんだ」


「えぇっ?じゃあ、私の洗濯物どうしたらいいんですか?」


「浴室に干せば?乾燥機ついてるし」


「はぁ…」


社長と私って、住む世界がことごとく違うような気がする。


「なんかここ、ホテルみたいですよね…」


思わずボソッと呟いた。


「まぁ基本、寝に帰ってるだけだからな。そう言われればそうかもしれない」


はは…。


私、この家でちゃんと暮らせるのかなあ…。