その一週間後、私は短大の時から住み慣れたアパートを引き払ってしまった。


物が全部無くなって、ガランとした部屋。


最後に雑巾で綺麗に磨き上げた。


ここには思い出がいっぱい。


親元から離れて、初めてのひとり暮らし。


初日の夜は、寂しくて泣いたっけ。


短大の友達が大勢遊びに来てくれたなあ。


みんなで試験勉強をしたり、たこ焼きパーティーやクリスマスパーティーしたりしたっけ。


まさか、こんな形でこの部屋とさよならするなんて思ってもみなかった。


最後に残った自転車をそっと撫でてみる。


朝日さん…。


私が突然引っ越してたら、驚くだろうな。


でも…。


悔しいけど、社長の言う通りだ。


彼女のいる人と、深い付き合いは出来ない。


やっぱり、ちゃんと別れてから来て欲しい。


そのためにも、この引越しは必要なことなんだ。


ただ、引っ越し先が社長の家っていうのが、大問題なんだけど。


「ふぅ…」


そろそろ、出発しますか。


「2年と5ヶ月。お世話になりました。

ありがとうございました!」


部屋に頭を下げる。

 
さようなら。


大好きだったアパート。


自転車を運び出し、鍵をかけた。