「じゃあ僕、午後から仕事だから、そろそろ行くね」


そう言って立ち上がる朝日さん。


「あ、はい」


私も立ち上がった。


わぁ…、こうして見ると背が高い。


背の高い私でも見上げてしまうな。


「絶対行くからね。また会おう」


「はい。じゃあまた」


朝日さんは自転車のハンドルを握ると爽やかに笑って手を振った。


私も胸の前で小さく手を振る。


自転車を手押ししながら坂道を上がり、道路へ出ると朝日さんは自転車に乗って行ってしまった。


「はぁ…」


私は魂が抜けたみたいに、しばらくそこから動けなかった。


あんな綺麗な顔の男の人、生まれて初めて見た。


いまだかつて、あんなふうに男性に優しく声をかけられた事があったかな。


『女の子』って言われて、すごくくすぐったかった。


きっと女性全般に優しい人なんだろう。


私が美人だったら恋に発展したかもしれないけど、まずありえない。


お店に来るなんて言ってたけど、どうせすぐに忘れちゃって来ないんだろうな。


まぁ、いいや。


とりあえずリフレッシュ出来たし、また明日からの仕事を頑張ろう。


そう思った私だった。