社長がまた私のスマホに耳を近づける。


だから社長!


近いんですけどっ。


『由梨ちゃん、会いたい。

今から家に行っていい?』


トクンと心臓が音を立てる。


はい、と…。


そう言いたくてたまらない。


そんな事を思っていたら、社長が耳を離して私をギロリと睨みつけた。


首を横に振り『だーめーだ』と口パクで言う社長。


…くっそー。


社長め……。


「だ、だめです……」


うぅ~。


泣きそう……。


会いたいのにーーー。


『そ、うだよね。

わかった。

また。

また電話するから』


「は、はい…」


『おやすみ…』


「おやすみなさい」


そう言って、私は電話を切った。


ガクンと力が抜ける。

 
えーん。


つらいよー。


社長がソファの背もたれにドカンと寄りかかる。


「朝日のヤツ、サイテーだな」


ど、どっちがですかっ!


「なぁ、朝日はお前の家を知ってるのか?」


「え…?あ、はい。

一度来たことがあります」