「あの…、こ、こんばんは」


『こんばんは。どうしたの?あらたまって』


クスッと笑う朝日さんに、どう対応して良いかわからずにいたら、いつの間にか社長が私の隣に座っていた。


ぎょっとしたのも束の間、社長が私のスマートフォンにピッタリ耳をくっつけて来た。


当然だけど、私との距離がものすごく近づいた。


『由梨ちゃん、あのね。

僕、ありさに正直に話したんだ……』


「あ、はい…。披露宴をキャンセルされたと聞きました」


『うん…。今の気持ちのままじゃ結婚なんて出来ないからね』


「あの、ありささんの様子は?」


やっぱり、それはすごく気になる。


多分、横にいる社長も気にしているはず。


『それがね。ありさ、意外に冷静だったんだ。

披露宴をキャンセルすることも、すぐに応じてくれて。

だけど、別れるのはイヤだと泣かれたよ…』


ありささん……。


そうだよね。


朝日さんが好きなんだもの。


そう簡単に別れたりなんか出来ないよね。


きっと、朝日さんも……。


社長がスマートフォンから耳を離し、私の顔を覗き込む。


ビックリして社長を見ると、口パクで何か話していた。


唇を読んでみる。


『わかれるまであいません』


軽くアゴを上げて首を振り、言えと急かす社長。


そ、そんなぁ~。


言えないよーーー。