「いいんじゃねぇの?」


「へっ?」


意外な言葉に、思わず変な声が出てしまった。


「人を好きになる気持ちは止められないしな」


びっくりして、目がぱちぱちしてしまう。


「でもな、水沢。

結婚が中止になっても、あの二人は完全に別れたわけじゃない。

それがどういう意味か、お前にわかるか?」


それは…。


それはつまり……。


「朝日はな、良い意味でも悪い意味でも優しいんだ」


「悪い意味でも…?」


社長がコクリうなずく。


「朝日は優しいから、ありさが別れたくないと言えば、そう簡単には別れられないはずだ。

そしたらお前は、ずっと宙ぶらりんのままにされるんだぞ」


「え…?」


「保留…。

キープとも言うかな」


社長の言葉に胸が張り裂けそうになる。


「アイツはお前にも優しくするだろう。期待させるような事を言って、必死にお前を繋ぎ止めようとするだろう」


「社長…」


「お前、アイツの愛人みたいな状態でいいのか?」


そんな…。


いや…。


もう、聞きたくない。


「俺は現実の話をしてる。

そんなヤツら、大勢見て来たから。

いいか?

最後に泣くのは女なんだ。

お前にその覚悟があるのか?」