「朝日から連絡があった。

披露宴をキャンセルしたいそうだ」


ドクンと心臓が大きく鳴る。


朝日さん、ありささんに伝えたんだ。


指先が冷たくなっていく。


「朝日は延期だと言っていたが…」


延期…?


「どうだろうな。

一度決めた結婚を中止するのは、二人にとってはかなり衝撃的なことだと俺は思うんだが」


どうしよう。


胸が苦しい。


「なぁ、水沢」


私の顔をじっと見つめる、社長のその鋭い視線にゾクッと悪寒が走る。


「お前、朝日に惚れてるんじゃないのか?」


背中に変な汗が流れてしまう。


怖い。


社長が怖い…。


「…あの、私…。

ご、ごめんなさいっ」


机に手をついて頭を下げた。


指の震えが止まらない。


「ごめんとはどういう意味だ?」


社長の低い声が、社長室に響き渡る。


「……好き、なんです…。

…朝日さんの、ことが…」


震える声で、ぽつりぽつり言葉を紡いだ。


きっと、社長は怒るに違いない。


ありささんを大切に思ってる社長だから…。


「ごめんなさい。

社長の大切な人の恋人を、

好きになって…ごめんなさい…」


社長が怖くて、もう顔が上げられないよ。