ありさはとても可愛いし、こんな彼女がいてうらやましいって色んな人に言われて来た。


性格も優しいし、女の子らしいし、申し分のない人だ。


ケンカだってこの五年間、ほとんどしていないよ。


だけどね、時々わからなくなるんだ。


もともと彼女はおとなしくてあまり会話もないし、僕とは全く趣味も合わない。


一緒にいて安心はするけれど、僕らには何も変化がないんだ。


今思えば、夏樹とありさを巡ってバトルをしていた頃が、一番楽しかったのかもしれない。


付き合いの長いカップルは、恋から愛へと変化していくものだし、結婚もこの延長なんだろうって漠然とそう思ってた。


だけど、僕の目の前に由梨ちゃんが現れた。


僕と同じようにサイクリングが好きで、音楽が好きで。


話していて、本当にすごく楽しかった。


僕の曲を楽しそうに聴いてくれて、心から嬉しかった。


また会いたいし、話したいと思った。


気がつけば僕は、由梨ちゃんの事ばかり考えていて…。


とてもじゃないけど、結婚式や披露宴の事なんて考えられなくなってた。


一時の気の迷い?


マリッジブルー?


そうかもしれない。


この冬で6年の付き合いになるありさと別れるのは、そう簡単じゃないこともわかってる。


思い出だって数え切れないほどあって、きっと身を裂かれる思いをすることも予測は出来てる。


それが怖くてずっと別れられなかったから。


だけどこのまま結婚したら、僕は後悔しそうな気がするんだ……。