花音のいる部屋に行くと、昨日と同じままの姿で、隅っこに座っていた。




「花音……来たよ」



なにを言っても、なにも言わない。


名前を呼んでも、顔をあげることはなかった。



俺は花音の目の前に行くと、横にある1冊のノートを手に取る。



そして、花音の手を握り、


花音の目の前に、そのノートを差し出した。




「花音。声が出ないなら、ノートで教えて?」


握っている手を優しくひろげ、そのノートを手渡す。




でも……。



ノートは花音の手によって、パシッとはじかれた。


そして、床にたたきつけられたノートは、パサッと乾いた音を響かせる。



開かれたページは、未来予想図。


君との未来の約束。



まるで、叩きつけられたノートは、


それを拒否されたようで、心がすごく痛んだ。




花音が想いを言葉にすることを、諦めてしまった気がした……。