あてもなく歩いて、私は一体どこに向かってるんだろう?
ーー『バカだなぁ、恋那だけだよ』
さっきの先生の声が、言葉が、頭から離れてくれない。
バカみたいに何度も何度も頭の中で再生されて、私を惨めにする。
不思議と涙は出ない。
きっと現実味が無いんだと思う。
あんな決定的な台詞を聞いても実際には見てない私は、心のどこかで勘違いじゃないかって思ってる。
そんなこと、あるはずがないのにね。
……悪い夢なら、早く誰か私を起こしてよ。
陽果は、恋那ちゃんは千堂くんが好きだなんて言ってたけど、違ったじゃん。
恋那ちゃんが好きなのは、先生。
そして先生も恋那ちゃんが好きだった。
校舎の突き当たりに辿りつき、目の前に現れた階段を上る。
そうだよね、恋那ちゃん女らしいし可愛いもんね。
やっぱり男の人ってああいう子が好きなんだね。
頭も良いし……と思って気がついた。
この前のテスト一位って恋那ちゃんだ。