「せっかく私といるのに、他の女の話しないでよね」
少しして聞こえたのは、ちょっと拗ねたような女の人の可愛らしい声。
せっかく私といるのに……って。
この声は、一体誰で先生にとってどんな存在?
胸騒ぎがする。
何だかこれ以上ここにいたらいけない気がする。
この先に、私の幸せなんてない気がする。
なのに、どうして…?
足が廊下に張り付いたみたいに、ここから動けない。
私に、逃げるなっていうの?
「ごめんって、そんな拗ねるなよ」
……嫌。嫌だよ、先生。
私たち生徒に向けられる声と違う。
そんなのずっと必死に先生の声に耳を傾けてきたんだから、すぐに分かるよ。
「俺には、お前だけだって」
いつもよりずっと優しくて、楽しそうで、嬉しそうでーー愛しそう。