別にやりたい委員があるわけじゃないし、昼休みや放課後の時間が他のものより奪われるから人気がないし。
ほとんど誰も来ない図書室で本を読むなり、ゴロゴロするなりして過ごしてたら終わる楽な仕事なのも、丁度いい。
「んじゃ、ちゃんと勉強しろよ受験生」
挨拶を終えると最後にそう言い残し、ひらひらと手を振りながら先生は歩き出す。
私はいつまで背中を見つめ続ければ良いのかな?
返事なんて返って来ないと分かってるのに、一人心の中で問いかける。
振り返って、私にだけ笑ってくれる。そんな夢みたいなことはやっぱり起きないのかな?
夢はあくまで夢にすぎないのかな?
ジッと、あまりにも真剣に先生を見すぎていたから、私は気づいたんだと思う。
教室を出て、ドアを閉めるときに先生は少しだけ頬を緩めて、柔らかい笑みを浮かべたんだ。
ーーこの教室の誰かに向かって。
でも窓際の一番前に座る私には先生が笑ったことは分かっても、誰に笑ったのかは分からない。