「クールな一匹狼くんもさすがに焦ってるのかな〜」

「え?」




千堂くんを追いかけようと思ったのに陽果の言葉に思わず足が止まる。




「焦ってる?千堂くんが?」

「見た目に反してシャイで臆病だしね」




陽果の言葉の意味が私には分からなくて首をかしげる。

千堂くんって人間は不思議だな。


どんどん知らない一面が増えていって、それも見る人によって全然違う。


なら、先生もそうなのかな?

私に見えている先生と、陽果に見えている先生は全然違うのかな?



私は一体先生のことをどれだけ知っていて、これから先どこまで知れるんだろう。

卒業まで一年を切った今、どこまで貴方に近づけるんだろう。



私は貴方の人生に、記憶に、少しでも残るような存在になれるのだろうか。

その為にはどうしたら良いの?



学校はそんな肝心なことは教えてくれはしない。

自分で経験して学べなんて、難しすぎるよ。

数学なんかより、ずっとずっと、難しい。