" 好き " と言ってしまいたくなる。
この想いを伝えたところで勝算なんて、欠片も無い。
先生の優しさは嬉しい。
だけど先生は、知らないでしょ。
……無責任で無邪気な優しさは、時に酷く胸を締め付けて苦しくさせる時があるんです。
それはやっぱり、相手が先生だからなの?
それとも " 恋 " は、そういうものなの?
初恋は、こんなに心が振り回されることなんて無かったよ。
……だとしたら、あれは恋ではなかったの?
「ほら、阿波。早く行くぞ!」
私の背中をポンと叩いて歩き出した先生は、真横を通り過ぎて前を歩き出した。
だけど私はまだ歩き出せず、ぎゅっと目を閉じた。
頑張れ、私。
大丈夫だよ、私。
ポケットにしまった二つの苺ミルク。
それは一瞬だけでも向けられた私だけへの優しさ。
望み過ぎたらバチが当たる。
この距離感だって、じゅうぶん幸せでしょ?
立ち止まったままの私に気付くことなく小さくなる背中に胸が苦しくて、その距離を少しでも埋めたくて、私は一歩踏み出して追いかけた。