「なぁ、数学準備室でもいいか?」
「へ?」
数学準備室って、あの数学準備室?
いや、この高校に社会科教室なんてあの場所しかないんだけど、私がいつも眺めてる、あの場所ですか?
「おーい、阿波?」
私の前でぶんぶんと手をふる先生。
レアだ、激レアだよ、可愛い。
また先生の視線も忘れて胸を踊らせていたら、間違えた。
目の前の先生はピタリと動きを止め一瞬目を見開く。
だけどすぐに、その顔をくしゃりと崩して笑みを浮かべた。
「あははは、阿波っ!何で手振ってるんだよ!」
マジでやめろと、大爆笑。
やめて欲しいのはこっちです。
ただでさえ恥ずかしいのに、そんなに笑わないでください……!!
私は沸騰しそうなほど熱を持つ顔を、手で扇いで冷ます。
「あはは、お腹痛い!!」
「わ、笑いすぎですよ、先生!!」