「そんな遠くまで話し声、聞こえる？」

「あー、じゃあさっき私たちが千堂くんと話してたからじゃない？」




さっきから普通に会話に出てくる " 千堂くん " という単語。

ということは、そういうことなんだよね？

私知らなかったんだけど、常識みたいな感じで陽果は話してる。




「ねえ、陽果？」

「ん？」

「……恋那ちゃんって、千堂くんのことが好きなの？」





私の言葉に、顔をこちら側に戻した陽果が、瞳を丸くした。

そして、力なく伏せられた。




「ほんっっっっと、茜ってそういう所は鈍いっていうか、疎いって言うか……」




呆れた顔とは裏腹に力のこもった声でそう言われた。


え、えっと……。

ということは、今私が聞いたことは合ってるってことで良いんだよね？




「そっか、さっき千堂くんと私が話してるの見て不安になったから、あんな質問したんだ」




納得、納得。

恋する乙女なら、持ち合わせて当たり前の感情だよね。