「ああああ、あ、茜っ!」
だけど、陽果にとってその表情は恐怖でしかないようで、若干涙目な気がする。
助けてといわんばかりの悲痛な声で私を呼ぶ。
「陽果、大丈夫だから落ち着いて?」
「ーーあ、そうだ」
思い出した、というような声。
どうしたんだろう、と視線を向けるよりも先に千堂くんが口を開く。
「おはよ、麻野」
……あぁ、千堂くんは陽果の名字を思い出そうとしてたのか。
「お、おおおはよう!?あ、おはよ……おはよう!」
陽果大パニック。
落ち着こう、取り合えず落ち着こうよ。
笑いそうになるのを堪えながら、二人のやりとりを見守る。
「……やべぇ。さすが阿波の友達、面白いな」